熱中症の緊急度判定|生命を救う重症度チェックリスト
熱中症は症状の進行が早く、適切な判断が生命を左右します。厚生労働省の熱中症診療ガイドライン2023に基づく緊急度判定基準をご紹介します。
【重症度I度】現場での応急処置で対応可能
- 主な症状: めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉痛
- 意識状態: 清明(はっきりしている)
- 体温: 正常~軽度上昇(37.5℃未満)
- 対応: 涼しい場所で休息、水分・塩分補給
【重症度II度】医療機関での受診が必要
- 主な症状: 頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感
- 意識状態: やや混濁(反応が鈍い)
- 体温: 38℃前後の発熱
- 対応: 速やかに医療機関受診、体温管理継続
【重症度III度】救急搬送が必要
- 主な症状: 意識障害、痙攣、高体温、発汗停止
- 意識状態: 意識レベル低下、呼びかけに反応しない
- 体温: 40℃以上の高熱
- 対応: 直ちに119番通報、積極的冷却開始
緊急判定のポイント
- 意識レベル: 名前・日付が言えるか
- 発汗状態: 汗が全く出ていない場合は重症
- 体温: 39℃以上は危険域
- 歩行能力: 自力で歩けない場合は医療機関へ
症状別応急処置法|状況に応じた適切な対応手順
めまい・立ちくらみ(I度症状)の応急処置
手順1: 安全な場所への移動
- 日陰または冷房の効いた場所へ速やかに移動
- 風通しの良い場所を選び、直射日光を避ける
- 座位または仰臥位で安静にする
- 足を心臓より高く上げ、血流を改善
手順2: 体温管理
- 衣服を緩める: ベルト、ネクタイ、ボタンを外す
- 皮膚を露出: 風通しを良くし、熱放散を促進
- うちわ・扇風機: 人工的な風で冷却効果向上
手順3: 水分・電解質補給
- 経口補水液またはスポーツドリンクを少量ずつ
- 1回50-100mlを5-10分間隔で摂取
- 水だけでは不適切: ナトリウム濃度の低下リスク
頭痛・吐き気(II度症状)の応急処置
冷却処置の実施
- 首・脇・鼠径部の冷却: 血管が太い部位を重点的に
- 氷嚢・冷却パックの使用(タオルで包んで直接接触を避ける)
- 冷水での足浴: 末梢血管拡張による放熱促進
水分補給の注意点
- 意識がはっきりしている場合のみ経口摂取
- 吐き気が強い場合: 無理な摂取は避け、医療機関へ
- 少量頻回: 1回30-50mlを2-3分間隔で
医療機関受診のタイミング
- 症状が30分以内に改善しない場合
- 吐き気・嘔吐が継続する場合
- 意識状態に変化が見られる場合
意識障害・高体温(III度症状)の応急処置
119番通報と同時進行
- 救急車要請: 「熱中症で意識がない」と明確に伝える
- 冷却開始: 通報と同時に積極的冷却を実施
- 気道確保: 側臥位で誤嚥を防ぐ
- バイタル確認: 呼吸・脈拍を継続監視
積極的冷却法
- 全身への冷水散布: 霧吹きで全身に冷水をかける
- 扇風機併用: 蒸発冷却による急速な体温低下
- 氷嚢の多点配置: 首・脇・鼠径部・手首・足首
- 目標体温: 39℃以下まで冷却継続
救急搬送判断基準|迷った時の行動指針
救急車を呼ぶべき症状(即座に119番)
意識レベルの異常
- 呼びかけに反応しない
- 名前・生年月日が言えない
- 時間・場所の認識ができない
- ろれつが回らない
身体症状の重篤化
- 体温40℃以上(腋窩温)
- 発汗が完全に停止
- 痙攣・ひきつけ
- 起立不能・歩行困難
消化器症状の悪化
- 持続する嘔吐(水分摂取不可)
- 激しい腹痛
- 下血・血尿
医療機関受診を検討する症状
改善傾向が見られない場合
- 30分間の応急処置で症状改善せず
- 水分摂取ができない状態が継続
- 体温が38℃以上で下がらない
既往歴・リスク要因
- 65歳以上の高齢者
- 慢性疾患(糖尿病・心疾患・腎疾患)
- 薬剤服用中(利尿薬・降圧薬)
- 妊娠中
救急搬送時の付き添い情報
救急隊への報告事項
- 発症時刻: いつから症状が始まったか
- 発症状況: 屋外作業、運動中、室内など
- 現在の症状: 意識状態、体温、症状の変化
- 応急処置内容: これまでに行った対応
- 既往歴・服薬: 持病や常用薬
搬送先医療機関での情報提供
- 詳細な経過: 症状の推移と時系列
- 水分摂取量: どの程度補給できたか
- 冷却処置の効果: 体温変化の記録
予防と応急処置グッズ|緊急時に備える必需品リスト
家庭・職場の常備品
体温管理用品
- 電子体温計: 迅速測定可能なタイプ
- 氷嚢・保冷剤: 複数個を冷凍庫に常備
- 冷却ジェルシート: 即効性のある冷却用品
- 霧吹き: 全身冷却用の大容量タイプ
水分・電解質補給用品
- 経口補水液: OS-1、アクアライトORS等
- 塩分タブレット: 発汗時の電解質補給
- スポーツドリンク: 糖分・電解質バランス良好
- 保冷バッグ: 冷たい飲み物の保存
測定・記録用品
- 温湿度計: WBGT値対応モデル推奨
- 血圧計: 脱水状態の把握
- 記録用紙: 症状・処置内容の記録
外出時の携帯必需品
個人携帯セット
- 経口補水液(500ml×1本)
- 冷却スプレー(瞬間冷却タイプ)
- 塩分タブレット(個包装)
- 体温計(小型・高速測定)
- 緊急連絡先カード
職場・イベント会場の設置品
- 大型冷却用品: 業務用氷嚢、クーリングマット
- 大容量経口補水液: 10L×複数個
- 救急搬送用担架: 移動困難者の安全搬送
- 遮光テント: 応急処置場所の確保
予防的水分補給戦略
作業・運動前の準備
- 前日からの水分貯蓄: 1.5L以上の摂取
- 当日の朝食: 水分・塩分を含む食事
- 作業30分前: 250-500mlの水分摂取
作業中の補給ルール
- 15-20分間隔: 150-250mlずつ摂取
- のどの渇きを感じる前の定期補給
- 汗の塩分濃度: 味覚で確認(しょっぱく感じたら要注意)
まとめ|熱中症応急処置の重要ポイント
緊急時の行動原則
- 安全確保: 涼しい場所への迅速な移動
- 重症度判定: 意識・体温・発汗状態の確認
- 適切な対応: 症状に応じた段階的処置
- 専門医療: 迷ったら医療機関受診・119番通報
応急処置の効果を最大化するコツ
- 素早い判断: ためらわず冷却開始
- 複数人での対応: 役割分担で効率化
- 継続的な観察: 症状変化の見逃し防止
- 記録の重要性: 医療機関での情報提供
熱中症は予防が最重要ですが、万が一の際は適切な応急処置が生命を守ります。この知識を家族・職場で共有し、安全な夏を過ごしましょう。
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