熱中症応急処置完全マニュアル|症状別対処法と救急搬送の判断基準2025

熱中症の緊急度判定|生命を救う重症度チェックリスト

熱中症は症状の進行が早く、適切な判断が生命を左右します。厚生労働省の熱中症診療ガイドライン2023に基づく緊急度判定基準をご紹介します。

【重症度I度】現場での応急処置で対応可能

  • 主な症状: めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉痛
  • 意識状態: 清明(はっきりしている)
  • 体温: 正常~軽度上昇(37.5℃未満)
  • 対応: 涼しい場所で休息、水分・塩分補給

【重症度II度】医療機関での受診が必要

  • 主な症状: 頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感
  • 意識状態: やや混濁(反応が鈍い)
  • 体温: 38℃前後の発熱
  • 対応: 速やかに医療機関受診、体温管理継続

【重症度III度】救急搬送が必要

  • 主な症状: 意識障害、痙攣、高体温、発汗停止
  • 意識状態: 意識レベル低下、呼びかけに反応しない
  • 体温: 40℃以上の高熱
  • 対応: 直ちに119番通報、積極的冷却開始

緊急判定のポイント

  • 意識レベル: 名前・日付が言えるか
  • 発汗状態: 汗が全く出ていない場合は重症
  • 体温: 39℃以上は危険域
  • 歩行能力: 自力で歩けない場合は医療機関へ

症状別応急処置法|状況に応じた適切な対応手順

めまい・立ちくらみ(I度症状)の応急処置

手順1: 安全な場所への移動

  1. 日陰または冷房の効いた場所へ速やかに移動
  2. 風通しの良い場所を選び、直射日光を避ける
  3. 座位または仰臥位で安静にする
  4. 足を心臓より高く上げ、血流を改善

手順2: 体温管理

  • 衣服を緩める: ベルト、ネクタイ、ボタンを外す
  • 皮膚を露出: 風通しを良くし、熱放散を促進
  • うちわ・扇風機: 人工的な風で冷却効果向上

手順3: 水分・電解質補給

  • 経口補水液またはスポーツドリンクを少量ずつ
  • 1回50-100mlを5-10分間隔で摂取
  • 水だけでは不適切: ナトリウム濃度の低下リスク

頭痛・吐き気(II度症状)の応急処置

冷却処置の実施

  • 首・脇・鼠径部の冷却: 血管が太い部位を重点的に
  • 氷嚢・冷却パックの使用(タオルで包んで直接接触を避ける)
  • 冷水での足浴: 末梢血管拡張による放熱促進

水分補給の注意点

  • 意識がはっきりしている場合のみ経口摂取
  • 吐き気が強い場合: 無理な摂取は避け、医療機関へ
  • 少量頻回: 1回30-50mlを2-3分間隔で

医療機関受診のタイミング

  • 症状が30分以内に改善しない場合
  • 吐き気・嘔吐が継続する場合
  • 意識状態に変化が見られる場合

意識障害・高体温(III度症状)の応急処置

119番通報と同時進行

  1. 救急車要請: 「熱中症で意識がない」と明確に伝える
  2. 冷却開始: 通報と同時に積極的冷却を実施
  3. 気道確保: 側臥位で誤嚥を防ぐ
  4. バイタル確認: 呼吸・脈拍を継続監視

積極的冷却法

  • 全身への冷水散布: 霧吹きで全身に冷水をかける
  • 扇風機併用: 蒸発冷却による急速な体温低下
  • 氷嚢の多点配置: 首・脇・鼠径部・手首・足首
  • 目標体温: 39℃以下まで冷却継続

救急搬送判断基準|迷った時の行動指針

救急車を呼ぶべき症状(即座に119番)

意識レベルの異常

  • 呼びかけに反応しない
  • 名前・生年月日が言えない
  • 時間・場所の認識ができない
  • ろれつが回らない

身体症状の重篤化

  • 体温40℃以上(腋窩温)
  • 発汗が完全に停止
  • 痙攣・ひきつけ
  • 起立不能・歩行困難

消化器症状の悪化

  • 持続する嘔吐(水分摂取不可)
  • 激しい腹痛
  • 下血・血尿

医療機関受診を検討する症状

改善傾向が見られない場合

  • 30分間の応急処置で症状改善せず
  • 水分摂取ができない状態が継続
  • 体温が38℃以上で下がらない

既往歴・リスク要因

  • 65歳以上の高齢者
  • 慢性疾患(糖尿病・心疾患・腎疾患)
  • 薬剤服用中(利尿薬・降圧薬)
  • 妊娠中

救急搬送時の付き添い情報

救急隊への報告事項

  1. 発症時刻: いつから症状が始まったか
  2. 発症状況: 屋外作業、運動中、室内など
  3. 現在の症状: 意識状態、体温、症状の変化
  4. 応急処置内容: これまでに行った対応
  5. 既往歴・服薬: 持病や常用薬

搬送先医療機関での情報提供

  • 詳細な経過: 症状の推移と時系列
  • 水分摂取量: どの程度補給できたか
  • 冷却処置の効果: 体温変化の記録

予防と応急処置グッズ|緊急時に備える必需品リスト

家庭・職場の常備品

体温管理用品

  • 電子体温計: 迅速測定可能なタイプ
  • 氷嚢・保冷剤: 複数個を冷凍庫に常備
  • 冷却ジェルシート: 即効性のある冷却用品
  • 霧吹き: 全身冷却用の大容量タイプ

水分・電解質補給用品

  • 経口補水液: OS-1、アクアライトORS等
  • 塩分タブレット: 発汗時の電解質補給
  • スポーツドリンク: 糖分・電解質バランス良好
  • 保冷バッグ: 冷たい飲み物の保存

測定・記録用品

  • 温湿度計: WBGT値対応モデル推奨
  • 血圧計: 脱水状態の把握
  • 記録用紙: 症状・処置内容の記録

外出時の携帯必需品

個人携帯セット

  1. 経口補水液(500ml×1本)
  2. 冷却スプレー(瞬間冷却タイプ)
  3. 塩分タブレット(個包装)
  4. 体温計(小型・高速測定)
  5. 緊急連絡先カード

職場・イベント会場の設置品

  • 大型冷却用品: 業務用氷嚢、クーリングマット
  • 大容量経口補水液: 10L×複数個
  • 救急搬送用担架: 移動困難者の安全搬送
  • 遮光テント: 応急処置場所の確保

予防的水分補給戦略

作業・運動前の準備

  • 前日からの水分貯蓄: 1.5L以上の摂取
  • 当日の朝食: 水分・塩分を含む食事
  • 作業30分前: 250-500mlの水分摂取

作業中の補給ルール

  • 15-20分間隔: 150-250mlずつ摂取
  • のどの渇きを感じる前の定期補給
  • 汗の塩分濃度: 味覚で確認(しょっぱく感じたら要注意)

まとめ|熱中症応急処置の重要ポイント

緊急時の行動原則

  1. 安全確保: 涼しい場所への迅速な移動
  2. 重症度判定: 意識・体温・発汗状態の確認
  3. 適切な対応: 症状に応じた段階的処置
  4. 専門医療: 迷ったら医療機関受診・119番通報

応急処置の効果を最大化するコツ

  • 素早い判断: ためらわず冷却開始
  • 複数人での対応: 役割分担で効率化
  • 継続的な観察: 症状変化の見逃し防止
  • 記録の重要性: 医療機関での情報提供

熱中症は予防が最重要ですが、万が一の際は適切な応急処置が生命を守ります。この知識を家族・職場で共有し、安全な夏を過ごしましょう。

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